WORDS BY HASAN BEYAZ
PHOTOS By yonilightz
K-popグループや振付が見出しを席巻する一方で、韓国の音楽シーンでは、シンガーソングライターや インディペンデント・アーティストたちによる別の波が、配信プラットフォームやYouTube、 小さなライブ会場を通じて独自のオーディエンスを築いてきた。DORIもその波の一人だが、 その世界にたどり着いた経緯はかなり意外だった。
彼女はテネシー州ナッシュビルでオーディオ・エンジニアリングを学んだ。韓国のインディー・アーティストの 典型的な出発点とは言いがたい。ナッシュビルの音楽文化は、まずソングライティングを一つの技術として捉える。 そこでは、構成、フィーリング、そして忍耐が大切にされる。DORIはその感覚を吸収して2020年に韓国へ戻り、 それを映し出す音楽を作り始めた。自ら作詞し、共同プロデュースし、録音の編集も手がけている。
近作のシングル「Violet」は、その表現が最も鮮明に表れた作品だ。質感はドリームポップで、 霞がかったギター、重なり合う空気感、そして記憶の奥から届いてくるような歌声が印象的。 彼女は色の violet を、この曲の軸となるコンセプトだと説明する。小さな失敗や悲しみが少しずつ積み重なり、 やがてより豊かで複雑なものへと変わっていく、という感覚だ。手描きで繊細なリリックビデオでは、 舞台の上にひとりの人物が描かれ、完全な色彩で表現されているのは彼女だけだ。
DORIは、オリジナル楽曲を1曲も出す前から、YouTubeでのカバーやvlogを通じてファンを築いていた。 作品数より先に、すでに支持があったのだ。
それは少し珍しい立ち位置だが、彼女にはよく似合っているように見える。 ものづくりを丁寧に、自分のやり方で進め、作品がそれぞれの速さで語り始めるのを待つアーティストだ。
あなたの曲「Violet」のサビには “So call me Violet.” とあります。あなたにとってVioletとは誰ですか。 自分の一部ですか、それともこれからなっていく誰かですか。
DORI 「Violet」は私自身を表しています。もっと深く、もっと豊かな色へと育っていく、 これからの自分でもあります。この曲には、日々の中で経験する小さな失敗や悲しみが積み重なって、 より成熟した自分を形作っていく、という考えが込められています。絵の具を何層も重ねることで、 より深く、より強い色が生まれる感じに近いと思います。
“many dots gathered together” でできている、という一節がありますね。あなたにとってそのdotsとは何ですか。 今のあなたを形作っている経験や感情は何でしょう。
先ほどお話ししたように、人生で私たちが直面するさまざまな困難のことです。つまずいたり、 すり傷を負ったり、思いがけない出来事で消えない傷が残ったりしても、 そうした経験こそが最終的に私という存在に深みを与え、未来に向かって強くしてくれる、 というメッセージです。
あなたの音楽は、速くてエネルギッシュなもの(「Leftover」)から、より夢見がちで柔らかなもの(「Violet」)へと 移っています。そこへ向かわせたものは何だったのでしょう。
「Leftover」はxyz.trackerとのコラボレーションによるプロジェクト・シングルで、さまざまな視点が 盛り込まれた作品でした。ストーリーラインや音楽的な方向性を見ると、この曲は私の1st EP、 Sofie により近いと思います。Sofie が持っていたのは、生のままの純粋な感情で、子どもの頃の自分に 手紙を書くような感覚でしたが、「Violet」では、痛みを受け入れて成長に焦点を当てる、 もっと成熟した雰囲気へと移っています。人としてもアーティストとしても、大人になる自然な流れだったと感じます。
音楽を作るとき、あなたはそれを映像のように、あるいは場所のようにイメージしていますか。 曲のビジュアルの世界観が、実際のサウンドと一致していることはどれくらい大事ですか。
実は私は、音楽を作るときにビジュアルやイメージにかなり頼っています。たとえば「Violet」は この曲の中心となるキーワードだったので、紫という色を思い浮かべたときにどんな感情が浮かぶのか、 そして音楽そのものが本当にその色を呼び起こしているのかを、長い時間考えていました。 それだけでなく、普段から特定のキーワードやある場面を思い描いて、それをひとつの世界のように扱っています。 そこからは物語に沿って歌詞を書くことが多くて、「これが本当の状況だったら、次に何が起こるだろう?」 と自分に問いかけながら作っています。
オリジナル音源を出す前からYouTubeで支持を集めていましたよね。そのことは、どの曲を出すかの判断に影響しますか。 期待に応えなければというプレッシャーはありますか。
YouTubeを始めたのは、歌うことが好きで、周りの人たちにも勧められたからです。当時は、カバー曲を ひとつ完成させて共有する、その過程自体が純粋に楽しかったんです。そこから自然と自分の曲を作りたいという 気持ちが生まれて、ありがたいご縁で自分の音楽に取り組み、デビューすることができました。 YouTubeで過ごした時期は、間違いなく成長のための大きな糧になりましたが、それが今の私に プレッシャーとしてのしかかったり、方向性を決めたりするわけではありません。今はまったく新しい章で、 まだまだ探求したいことが次々と見つかっています!
ナッシュビルでオーディオ・エンジニアリングを学びましたが、その街と経験によって、 音楽の聴こえ方はどう変わりましたか。
ナッシュビルで学んだことで、非常に幅広い音楽に触れることができました。若い頃は、聴いていた音楽の 範囲が比較的限られていたんです。でもオーディオ・エンジニアリングを学ぶ中で、古い音楽を掘り下げるようになり、 自分が生きていない時代にまでノスタルジーを感じることもありました。時代が違っても、私たちは結局 似たような感情を共有しているのだと気づいて、自然とより実験的な音楽に惹かれるようになりました。 私にとっては、果てしない宇宙に飛び込むような、とても大きな学びの経験でした。そうした瞬間に刺激を受けながら、 今もさまざまなスタイルを試し、自分に本当に合うサウンドを探し続けています。
韓国以外の人が韓国の音楽を聴くと、何でも「K-pop」と呼ぶことがありますよね。その言葉はあなたにとって 何か意味がありますか。自分もその中に含まれると感じますか、それとも違いますか。
私はK-popを、ただの音楽ジャンルよりもずっと大きなものだと思っています。私にとってそれは、 多様なプロフェッショナルたちが卓越したスキルを持って作り上げる、総合的なアートフォームです。 その上に、しっかりしたトレーニング・システム、豊富な資本、そして非常に手厚い環境があります。 そういう意味では、自分をK-popと呼ぶというより……K-indie、でしょうか。
あなたはオーディオ・エンジニアとして訓練を受けましたよね。その技術的な知識は、曲作りの仕方を変えますか。 歌詞を書いている段階から、すでにプロダクションまで聴こえていますか。
曲を書くときには、だいたい最終的にどう仕上がるかの全体像を思い描いています。でも、 すべてを一人で作るというより、アレンジの過程でプロデューサーたちがそれぞれの色を加えてくれることで、 楽曲の雰囲気がずっと鮮明になります。だからこそ、大きな絵はみんなで一緒に作るものだと強く感じています。 ソングライティングの段階では、伝えたいストーリーやキーワード、耳にどれだけキャッチーに感じるかを より重視する傾向があります。
曲を作っているとき、それが完成したと分かるのはどんな瞬間ですか。
すべてのオーディオ機器で試してみて、どんな違和感もなく、そのまま自然に楽しめると感じたときに、 本当に完成したと思います。
最近の作品をレコーディングした中で、今も思い出す瞬間はありますか。
やはり最近の「Violet」のレコーディングですね。この曲には上品なボーカルのノリが必要だったのですが、 歌いすぎにならず、かといって抑えすぎにもならない、そのちょうどいい中間を見つけるのが難しかったです。 レコーディング中は、歌い方が不自然になったり、過剰に聞こえたりしないように、かなり時間をかけて調整していたのを覚えています。
この1〜2年で、アーティストとして最も変わったのはどんなところですか。
去年の終わりから今年の初めにかけて、初めてのフィジカルEPをリリースし、小さなソロコンサートも開催して、 ついにリスナーの皆さんに直接お会いすることができました。そのとき初めて、「ああ、本当に音楽をやっているんだ」と 実感したんです。私にとって大きな節目でした。それ以来、ステージでもずっとリラックスできるようになって、 ファンの皆さんとの交流が以前よりずっと楽しくなりました。音楽的にも、いろいろな面を扱う力が かなりついたと感じています。この数年でたくさんの経験をしたので、今は音楽を通してもっと伝えたいことが たくさんあります。
以前は音楽や自分自身について信じていたけれど、今はもう信じていないことはありますか。
「完璧でなければならない」という考えは、かなり手放せました。今は、たとえ完璧でなくても、 その時点でできることを全力でやることが本当に大切だと思っています。同時に、「何でもできる」という 感覚も薄れました。人は実際、何でもできるわけではないと気づいたんです。今は、自分にできることを 精一杯やるには本当の勇気が必要で、もしその道がしっくりこなければ、思い切って手放して 新しい方向を探すことも大切だと思っています。
5年後、どんなアーティストになっていたいですか。
とにかくたくさんライブをしたいです。できるなら、フルアルバムもぜひ出したいし、 フェスのステージにも立ちたいです。最終的には、人が積極的に何度も聴き返したくなるような、 常に聴いて見たくなるようなアーティストになりたいです。
この時期のあなたの音楽について、人々に何を覚えていてほしいですか。
私はまだミュージシャンとして成長の真っただ中にいると感じていて、その分、今もいろいろなことを試し続けています。 デビューしてもう4年目ですが、まだまだ見せたいものがたくさんあります。将来この時期を振り返ったとき、 ただの、混沌としていて、不器用だけれど美しい成長の物語として覚えていてくれたらうれしいです。
この特集は、紙版第5号からの抜粋です。ご購入は こちらから。







