HYBEはK-POPのメルチャンダイズを憧れのファッションステートメントへと変えている
By Andrea Sacal
かつて、アーティストのグッズは驚くほどシンプルだった。コンサートに行って、背面にツアー日程が入ったTシャツを買い、ライブのフロアで着て、何年か後にふと取り出しては「そう、私はあの場にいた」と思い出す。グッズは記念品だった。ワードローブと競い合おうとしていたわけではない。ところが今では、そう言い切るのがどんどん難しくなっている。特に、HYBE所属のアーティストへの強い思い入れを持つK-POPファンならなおさらだ。
韓国の巨大エンターテインメント企業であるHYBEは、ツアーグッズを通じてファンが推しアーティストとつながる方法そのものを変えつつある。定番のバンドTシャツやフーディーを、ファッションの“もうひとつの顔”のような存在へと巧みに変えているのだ。
TOMORROW X TOGETHERによるDEINET、ISTKUNST、PAUSE PLEASEといったブランドとのコラボレーションに加え、BTSおよびJINのツアーグッズコレクションの、より洗練された展開を見ても、HYBEはラグジュアリーとストリートウェアの手法を大きく取り入れた戦略を築いてきたことがわかる。キャンペーンフィルム、エディトリアル写真、緻密に計算されたスタイリング、限定ドロップ――そこにあるのはパリ・ファッションウィークのランウェイ席だけを除けば、ほぼすべてだ。その結果生まれるのは、土産物というよりもエディトリアルなカプセルコレクションのように感じられるグッズ。チャート上位のミュージシャンを背負いながらも、ビジュアルには妥協したくないファンダムに向けられている。
HYBEがアーティストグッズの分野で先頭を走り続けるなかで、ひとつの問いが浮かぶ。HYBEは単にグッズを売るのが上手くなっているだけなのか、それともグッズ以上の何かを売っているのか。
HYBEの戦略を理解するいちばん簡単な方法は、彼らが何をしていないかを見ることだ。従来のグッズは、アーティストとの距離の近さに頼っている。フーディーを買うのは、セレブの一部を自分のそばに持ち歩くためであり、デザインは二の次になりがちだ。だがHYBEの最近のやり方は、その構図をひっくり返している。たとえばTXTのファッションパートナーシップは、単に無地のアイテムにロゴを載せただけのものではない。韓国のファッション業界の中ですでに確立されたブランドとのコラボレーションであり、デザイン性と信頼感の両方を会話の中心に持ち込んでいる。HYBEのコラボは音楽の“おまけ”ではなく、それ自体が欲しくなる対象として提示されているのだ。
ファッションには、一部の人だけが知る秘密がある。印象は、プロダクトそのものと同じくらい重要なのだ。白いTシャツも、無地の背景で撮ればただの白いTシャツにすぎない。だが同じ服が、3分間の短編映画のようなシネマティックなキャンペーンの中で、陰影のあるライティングとともに撮影されれば、たちまち“投資価値のある一着”のように見えてくる。その答えは、ストーリーテリングにある。HYBEは、その秘密のレシピを見つけたのだ。よく見ると、最近のBTSコレクションは従来のファングッズから一線を画している。単に「今これが買えます」と告知するのではなく、エディトリアルなビジュアルと意図的なスタイリングによって、特定のムードを伝えるドロップとして打ち出されている。
HYBEは、次のワードローブの主役になるグラフィックを売っているだけではない。ステージの枠を大きく超えた文脈そのものを広げているのだ。K-POPファンダムは、ただ聴くだけではない。追いかけ、真似をし、コミュニティを築く。その結果、HYBEはファンをアーティストの内輪にいるかのような感覚へと誘う物理的なプロダクトを生み出している。SeventeenからNewJeans、BOYNEXTDOORまで、彼らは単に楽曲を消費する相手ではなく、その美学を取り入れたくなる存在になる。ファンにとってグッズは、アーティストとの結びつきをより深く感じられるものだ。ファン以外の人にとっては、たまたまアーティストとつながりのあるアイテムになる。目的は、必ずしもファンダムを置き換えることではなく、その外側へと広げることにある。
HYBEの戦略で最も示唆的なのは、そもそもの「グッズ」という定義に挑んでいる点かもしれない。同社は先日、BOYNEXTDOORの1stフルアルバムを記念したカプセルコレクションを発表した。定番のフーディーの代わりに、家の形をしたストレスボールや、ミニサイズのベースボールキャップ型キーホルダーを用意し、通常のグッズを欲しくなるアクセサリーへと変えている。2025年のISTKUNST x TXTコラボは、グループのACT: PROMISE EP.2 World Tourに合わせ、天使のようなライティングとニット素材のバーシティジャケットにフォーカス。一方、PAUSE PLEASEでは、TXTがトゲのあるパジャマ姿でベッドに入るような世界観を打ち出している。
HYBEは、ファンがもはや欲しがっているのは記念品ではなく、ファンダムの内側でも外側でも成立するプロダクトだと考えている。忠誠心と同じくらい“センス”を示せるアイテムこそが、新世代のK-POP消費者を形づくっているのだ。この実験が最終的に成功するかどうかはまだわからない。ただ、明らかなのは、HYBEがアーティストグッズをもはや後回しにはしていないということだ。いまやそれを、ひとつの文化的プロダクトとして構想し、製造し、マーケティングしている。HYBEが見抜いたのは、ファンダムを動かす感情的なつながりは、ファッション消費とも重なりうるということだ。その結果生まれるのは、グッズとファッション、ファンダムへの献身と消費文化のあいだに位置する、新しいカテゴリーである。最も価値のあるグッズは、もはや「その場にいたこと」を証明するものではない。自分がそこに属していると感じさせてくれるものなのだ。




